活動レポート

難民を知る。支援を知る。守られるべき人権とは何か? 国連UNHCR協会の天沼 耕平さんに聞きました | オンライン学習会「出口の見えない難民問題の今」詳細レポート(1)

パルシステム東京は2021年7月23日(金・祝)、「出口の見えない難民問題の今」と題して、難民支援に取り組むNGO3団体を講師に、学生らとのトークセッションも交えたオンライン学習会を開催しました(参加者167名)。当日の講演や質疑応答の様子の一部を4回に分けて詳細をレポートします。

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世界の難民について

▲前回リオ五輪に続き、2020東京五輪にも難民選手団として出場した競泳のシリア出身のユスラ・マルディニ選手

※ シリアでは2011年3月から続く内戦で国民の半分以上が国内外へ避難を強いられている。ユスラさんも2015年に決死の逃避行を経てドイツへ渡り、難民に。難民支援への理解と共感を広めるべく、UNHCR親善大使も務める。

講師:天沼 耕平 氏

講師:天沼 耕平 氏

国連UNHCR協会 広報啓発事業 / 難民高等教育プログラム担当。

東京学芸大学教育学部卒業後、淑徳中学高等学校において3年間社会科教員として勤務。その後、児童養護施設の指導員や開発系NGOの職員などの経験に加え、熊本県の農業法人において農業にも携わる。

2012年に国連UNHCR協会に入職し、「国連難民支援プロジェクト」関東エリアマネージャーを経て現職に至る。

難民とは?必要な支援とは?

難民とは紛争や迫害などにより住み慣れた故郷を追われ、国境を越えて移動せざるを得ず、戻ろうと思っても戻れない人々を指し、国境を越えない場合は国内避難民と呼ばれます。

 

国連が定めた「世界難民の日」(毎年6月20日)に発表される「グローバル・トレンズ・レポート」によると、2020年末時点で故郷を追われた人々の人数は約8,240万人。実に2011年の2倍と、危機が急拡大しています。ほとんど何も持たず着のみ着のままで何とか避難してくる難民・国内避難民は、その8割が女性や子どもたちです。

「中長期に渡る支援では、いつ終わるともわからない難民生活への支援として『希望』がとても大事。大人には仕事、子どもには教育が必要」と力説する天沼さん。しかし、難民の子どもたちが教育を受けられる割合は、小学校で77%、中学校・高校の中等教育で31%、高等教育は3%に留まるといいます。

 

「教育を受けていない子どもたちの多くは、苦境に立たされ、家族を守るために働きに出たり、『いい仕事がある』と戦争にまで駆り出されたり、あるいは人身売買のターゲットにされたりもします」(天沼さん)

天沼さんは、2018年に国連総会で採択された難民支援に関するグローバル・コンパクトという考え方に基づき、「既存の国連やNGO、受け入れ国による難民支援だけでなく、社会全体で企業、団体、そして個人が自ら考え、“難民のために”だけでなく、“難民とともに”アクションを起こして進めていくことが本当に大事」と、パートナーシップでゴールを達成するSDGsターゲット17の重要性を唱えました。

「新型コロナウイルスの脅威によって、さまざまな支援の必要性が高い中で困難な局面を迎えています。しかし、この緊急事態にさらに襲い掛かる緊急事態の状況下でも、難民の人々は力強く生きています。医師や看護士といった能力やスキルを活かして、もちろん特定のスキルがない人々も、受け入れ先のコミュニティの人たちと一緒になって困難に立ち向かおうとしている人も大勢いることをぜひ、忘れないでいてほしい」(天沼さん)


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