活動レポート

ついに2021年1月22日に核兵器禁止条約発効!|平和学習会「核兵器はなくせるの?核をなくすためにできること」

 パルシステム東京では平和を学び考える機会として毎年平和学習会を開催しています。

 

 2020年12月12日に開催した今年度の平和学習会では、核兵器廃絶をテーマにこれまでの世界の流れや、核兵器禁止条約 50ヶ国批准までの道のりをたどりながら、核兵器廃絶は可能であること、そのために今 自分たちにできる行動は何かを学びました。

※新型コロナウイルス感染防止のため、会場参加9名とオンライン参加73名での開催

【関連イベント情報】2022年2月19日(土) YouTubeライブ配信!(参加費無料・申込不要)

パルシステム東京・松野玲子理事長 開会のあいさつ

パルシステム東京・松野玲子理事長

 人と人が会うことを制限され、不安な気持ちを抱える毎日ですが、本日同じ思いをもつ皆さんと会場やオンラインで集まることができたことをとてもうれしく感じます。

 

 1月22日に核兵器禁止条約が発効されることになりました。批准した50か国は核を持たない小さな国々ですが、小さな力が集まって世界を動かしたと感慨深く思うと同時に、コロナ禍の中でも私たちができることはまだまだあるという思いを強くしました。きょうの講演を聞き、みんなで何をすべきかを一緒に考えていきたいと思います。


核兵器はなくせるの?―答えは「YES」です  川崎 哲(かわさき あきら)さん講演より

講演中の川崎さん

 12月10日は世界人権デーであるとともに、ノーベル平和賞の受賞式の日でもあります。2017年に「核兵器禁止条約への貢献」でICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)がノーベル平和賞を受賞したとき、私は『核抑止のためにこの賞を使いなさいというメッセージを込めた受賞なのだ』と思いました。

 

 ICANにはパルシステムグループも組織として加入していますから、その運動への称賛であるとともに、組合員の一人ひとりにも向けられたメッセージであると捉えてください。

 

 きょうは『本当に核兵器をなくすことができるの?』と聞かれたら、『YES』と答えられる理由、また核兵器をなくすために私たちひとり一人ができることはたくさんあるのだということをお話していきます。

感染症対策として各テーブルに飛沫防止スクリーンを設けました

感染症対策として各テーブルに飛沫防止スクリーンを設けました

核兵器ができてたった75年。なぜなくせないと思うのかが不思議

 条約が発効されると1年以内に締約国会議を開催し、実際に核兵器をなくすプロセスのための実務的準備に入り、いよいよ核兵器廃絶が具体的になります。

 

 まず企業が生産終了に向かいます。そして非人道的なものに投資することは、銀行の評判にかかわるということで、投資の引き揚げが行われます。日本でもすでに大手メガバンクグループが、核兵器を製造する企業には融資しないと表明しました。

 

 今世界には13,410発の核兵器があります。この数字を見ると条約ができたとしても、核兵器はなくならないのではと思ってしまう人も多いと思います。しかし過去を振り返ると、生物兵器や対人地雷などは禁止条約ができ、違法なものとなったことで生産、使用ができなくなっているのが事実です。

 

 人類の長い歴史の中で核兵器ができて75年。たった75年しか存在していないものを、なぜなくすことができないとみんなが思ってしまうのか、私は不思議でなりません。

 

 人間はおかしなこと、人道的に問題があるものはなくしてきたのです。そのターニングポイントが国際条約、規範です。私たちICANはこのことから「核兵器禁止条約は、核兵器の終わりの始まり」と言っているのです。

 

 そして、「核兵器の終わり」がいつ来るのかは、「核兵器は違法だ」と声をあげて、核兵器廃絶に向かって活動するのか、または核に守られているという考えを持ち続けるのか、これからの時代を担う方たちの選択で決まると思います。

 


なぜ日本は核兵器禁止条約に批准しないのか  川崎 哲氏、熊谷 伸一郎氏のトークセッションより

トークセッションの様子。向かって左が熊谷さん、右が川崎さん

 学習会の後半は、月刊「世界」編集長の熊谷さんをコーディネーターに迎え、トークセッションを開催。10年来のお知り合いの二人は、和やかな雰囲気でトークを繰り広げました。

ICANのノーベル平和賞受賞は、非常に画期的(熊谷さん)

 ICANがノーベル平和賞を受賞したことは、非常に画期的なことでした。条約が発効されるということは、核兵器が違法になった、許されないものになったということです。

 

 少し前まで人類は自分たちを何度も絶滅させるほどの核兵器を持っていた。それはやっぱり異常なこと、あってはならないことだと認めるまでに達したのは、歴史的なことだと思います。

 

 平和活動で海外を訪問した際に、その国の方から「日本から来たなら広島、長崎の被爆体験の話をしてほしい」と言われることも多く、その際に『東京出身だから知らない』とは言えません。でも多くの日本人は、あまり関心を持っていない、または深く知らないのではないでしょうか。

日本が批准しない理由 日本の原発、核燃料と核兵器禁止条約(川崎さん)

 日本は世界でも極めて珍しい、核燃料サイクル(プルトニウム再使用)を今でも推進する国です。日本では原子力推進委員会で安全性を確認しているため、放っておけばこれからも進んでいきます。

 

 プルトニウムは大変重い物質で、握りこぶし1個分で約8キロになります。原発で使っている放射能物質は加工しないと使えないのですが、8キロあれば原子爆弾1個ができる。もっと技術力があれば3~4キロでできるといわれています。

 

 核軍縮と言いながら、45トンのプルトニウムを保有する日本。一体何のために持っているのか。国際社会から見たらこの国は核兵器を作る気なのではないかと思われても仕方のない状態なのです。中国や北朝鮮にも怖い国だと思われています。

 

 原発を稼働しているとどんどんプルトニウムができてしまいます。処分場も決まっていない、使うあてもないのに再利用するのだと、どんどんプルトニウムを取り出している。

 

 このことが日本が批准しないことと大きく関係しているのではないかと思います。この問題とこれからどう向き合っていくかが日本の大きな課題だと思います。

長崎県の高校生平和大使ともオンライン中継で想いを共有

高校生平和大使はオンラインで参加

 トークセッション後半は、公募で選ばれた第23代高校生平和大使(長崎県)に活動を始めたきっかけや、現在の平和活動についてお伺いしました。

 

 高校生平和大使のお話を受け「若者には核のない世界にぜひ踏み込んでほしい。これから進学のための勉強で忙しくなるかと思いますが、核兵器をなくす、平和な世界をつくるために無駄なことはないので、ぜひ受験勉強をがんばってほしいと思います。」

と川崎さんはエールを送りました。

 

 最後に「私たち大人は長崎の高校生ががんばっていると喜んでいるだけではいけないのです。広島、長崎と全国では感覚に落差がありすぎます。平和、核兵器禁止に向けた活動を日本全体に広げるためには何をしたらいいかを考えていかなければなりません。」

と川崎さんは私たちに課題を投げかけ、学習会を締めくくりました。

川崎 哲(かわさき あきら) 氏 プロフィール

川崎 哲(かわさき あきら) 氏 プロフィール

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員

ピースボート共同代表

 

  • ●共同代表をつとめる「NGOピースボート」は、世界唯一の被爆国である日本の団体として、ヒロシマ、ナガサキの声を世界に届けることで、ICANに貢献。コロナ禍の2020年には、世界190カ国を目指してのオンライン被爆証言会を開始。その様子を核兵器禁止条約の締約国会議で公開し、証言会に参加した若者の感想も伝える予定。 

※NGOピースボートホームページはコチラ

熊谷 伸一郎(くまがい しんいちろう) 氏 プロフィール

熊谷 伸一郎(くまがい しんいちろう) 氏 プロフィール

岩波書店『世界』編集長
1976年生まれ。著書に『金子さんの戦争』(リトルモア)、

『なぜ加害を語るのか』(岩波ブックレット)など。

 

  • ●中学生の時両親と広島へ行ったことが平和活動にふれる第一歩。核兵器反対運動が盛んだった80年代を過ごし、湾岸戦争があった大学生の時に平和運動を始める。

参加者からの感想

 参加者からは、

「核兵器禁止条約を推進することは日本として至極当然であるとこれからも信じ、関心を持ち続けていきたいと思います」

「高校生平和大使の生の声を聞けたのは貴重でした。被爆体験をしたご家族が亡くなられたことで、被爆者の証言を聞く機会は最後になったと実感されていました。被曝四世という運命を背負って活動するのはプレッシャーかもしれませんが、気負いすることなく、堂々とできることを続けていってもらいたいです。応援しています」

などの声が寄せられました。

 

 パルシステム東京は、今後も核兵器のない平和な世界をつくるために、さまざまな活動を続けていきます。

(編集:パルシステム東京広報室)