活動レポート

3.11を忘れない「忘れていませんか?13年前のあの日のことを~福島・宮城からのメッセージ~

2024.3.11

 パルシステム東京は、東日本大震災から13年、『3.11を忘れない』を基本視点に東京で出来ることに取り組んでまいりました。

コロナ禍の中、オンラインでの開催を余儀なくされていましたが、今年度は4年ぶりの会場での開催、約80名の方々に集まっていただきました。第1部は福島県浪江町から、岡洋子さん、吉澤正巳さんの講演。第2部は宮城から、映画『「生きる」大川小学校津波裁判と闘った人たち』の上映&トークの2部構成、東北に想いを馳せる日となりました。

 

【第1部】 福島県浪江町 岡洋子さん

震災のことは何年たっても忘れることが出来ないが、伝えることも自身の使命だと語る岡さん

震災のことは何年たっても忘れることが出来ないが、伝えることも自身の使命だと語る岡さん

震災のことは何年たっても忘れることが出来ないが、伝えることも自身の使命だと語る岡さん

「浪江まち物語伝え隊」の紙芝居、浪江消防団の話「無念」を上演する岡さん

岡洋子さん

岡洋子さん

震災前は浪江町で農業を営む傍ら、浪江町婦人消防隊で活動。原発事故後福島市に避難。2014年から「浪江まち物語伝え隊」で浪江町の昔話と震災後を伝える紙芝居を上演する活動をしている。2018年に自宅倉庫を改造し、みんなが集う場「OCAFE]を週末運営している。近年は草木染めにも着手し、「namiro」としてハンカチや小物バッグなどの製作もしている。

福島県浪江町 「希望の牧場・よしざわ」吉澤正巳さん

吉澤正巳さん

吉澤正巳さん

1954年千葉県四街道市出身。

東京農業大学農学部畜産学科卒業

畜産農家

浪江町の「希望の牧場・よしざわ」で原発事故で被ばくした被ばく牛を寿命まで生かしながら、原発の時代を乗り越える未来をめざしている。

                                  2月24日のショート動画

※当日の講演内容を講師の許可を得て公開しております。

<震災から13年、福島県から来ていただいたお二人にお話を伺いました>

 岡洋子さんは、震災前は農業を営んでいました。原発事故により長期避難をを余儀なくされ、母屋や蔵は荒らされ解体せざるを得なくなり、福島市に自宅を再建しました。その際、思い出のある浪江、家族の居場所を何らかの形で残せないかと考え、当時倉庫だった小さな平屋を改築して「OCAFE」を2018年に立ち上げました。地元の方がふらっと寄れる場所として、また2014年から「浪江まち物語伝え隊」として、浪江の昔話や震災後の様々なエピソードを紙芝居にした話を伝える場としても担っています。

震災紙芝居を通じて、災害や原発事故の恐ろしさ、福島の今の現状を多くの方々に伝える活動をしているが「何年たっても東日本大震災の事は忘れることはできない、年数は関係ないんです」との言葉が心に残りました。

 吉澤正巳さんは、現在、代表の「希望の牧場・よしざわ」で、原発事故により出荷できなくなったなった被ばく牛を、原発事故後の国と県からの殺処分に抗議し、震災当時から寿命まで飼育しています。浪江町は、小高浪江原発計画を阻止した町でありながら、隣の原発事故の放射能で全町避難になり、以前のようには人は戻っていない状況です。

「俺は牛飼い、命を無駄にはしない。牛は原発事故の生き証人、ここで生き続けることが、原発の存在を問いかけ、命の大切さを訴えることになる」と。東京に住んでいる私たちには「福島の犠牲の上で電気を使い、生活が成り立っている。もっと福島に関して無関心にならず、声を上げかかわるべきだ」と力強く訴えました。当日会場で、絵本「希望の牧場」(作:森絵都、絵:吉田尚令、出版:岩崎書店)、吉澤さんが取材され掲載されている「鎮魂と抗いの12年」山本宗輔(写真・文、出版:彩流社)の本、希望の牧場の写真等展示、紹介しました。

 

 

 

【第2部】映画『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』上映&トーク


第2部は、2023年11月に「みやぎ復興スタディツアー」で訪問した大川小学校を舞台にした映画『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』の上映、映画にかかわった松本裕子プロデューサーと鈴木秀洋教授のトークを開催しました。

東日本大震災で多数の犠牲者を出した宮城県石巻市の大川小学校を題材に、遺された親たちの10年に及ぶ思いを記録したドキュメンタリー映画です。
2011年3月11日に発生した東日本大震災で、津波にのまれて全校児童の7割に相当する74人の児童(うち4人は行方不明)と10人の教職員の命が失われた大川小学校。地震発生から津波到達までは約51分、ラジオや行政の防災無線で情報は学校側にも伝わり、スクールバスも待機していたにも関わらず悲劇は起きた。その事実や理由について行政からの説明に疑問を抱いた一部の親たちは、真実を求めて提訴に至る。わずか2人の弁護団で、いわれのない誹謗中傷も浴びせられる中、親たちは“我が子の代理人”となって証拠集めに奔走する。親たちが延べ10年にわたって記録した膨大な映像をもとに、寺田和弘監督が追加撮影などを行いドキュメンタリー映画として完成させました。

映画を観ただけではわからない部分もありますので、上映後に松本裕子プロデューサーと鈴木秀洋教授から映画に関するお話をいただきました。

お二人から、この映画を寺田監督が作るきっかけや監督の想い、ご遺族の方々の苦悩、裁判にかかわった弁護士の方々、映画に携わった感想、災害対策、防災についてなど、多岐にわたりお話しいただきました。

この映画はいろんな側面から考えることが出来、親の立場、教員の立場、行政の立場により、見方が違うこと。なぜ、子どもたちが学校で最後を迎えなければいけなかったのか、その前に何かできることはなかったのか。

この悲劇を二度と起こさないために、私たちでできることは何なのか。とても考えさせられました。

アンケートでもお二人の解説を聞いて「大川小学校の危機意識の問題が理解しやすくなった」「上映後の解説があって良かった」との声もあり、多くの方に観ていただきたい映画でした。

松本裕子さん

松本裕子さん

㈱パオネットワーク代表取締役でプロデューサー。
日本テレビ「NNNドキュメント」「news zero」フジテレビ「ザ・ノンフィクション」など、主に報道・ドキュメンタリーを担当。東日本大震災後は、NHKでレギュラー番組「東北発☆未来塾」「サンドウィッチマンの東北酒場で逢いましょう」、現在は、防災番組「明日をまもるナビ」を制作。2018年、滋賀県に住む自閉症の古久保憲満さんを主人公にした『描きたい、が止まらない』(近藤剛監督)をシンガポールのテレビ局と共同制作。後に全国で劇場公開(自主上映受付中)。本作『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』が2作目の劇場公開作品のプロデュースとなる。 

鈴木秀洋さん

鈴木秀洋さん

日本大学大学院危機管理学研究科教授。法務博士(専門職)。保育士。防災士。
元自治体子ども家庭支援センター所長、男女協働課長、危機管理課長、法務部等歴任。全国初の妊産婦・乳児専用の母子福祉避難所の設計を行う。内閣府男女共同参画の視点からの防災・復興の取組に関する検討委員会委員、同防災研修プログラム検討会(座長)、東京都防災会議委員、東京防災・東京くらし防災編集・検討委員会委員、東京都避難所運営WG委員、品川区福祉部災害時対応等検討委員会等。大学では行政法・災害法の授業を担当し、自治体では災害・危機管理研修で全国行脚。(主著)大川小津波事件に関する論稿を収めた『社会的弱者にしない自治体法務』、『行政救済実務ハンドブック(改訂版)』(第一法規)等。本作『生きる』にも登場。

会場の様子

参加者アンケートの感想(1部抜粋)

●13年前のあの日のことは忘れていない。でも「今、何をするのか?」それは終わったことにしたい(国・政府)が、マスコミなどを使って忘れさせようとしている。そして、日常の暮らしにかまけて、深く考えない私がいる。なので、311シンポジウムはとても有意義でした。

●東京にいると、東日本大震災のことは忘れがちになります。こういう時期に企画を開催してくれると自分自身の為になります。元旦に能登の地震もあり、明日は我が身ということを痛感しています。福島の岡さんの震災はいつまでも心に残っていて忘れることはできない。苦渋の思いで自宅を離れることを余儀なくされ、原発さえなければとの想い、静かな涙の訴えは心に刺さりました。

●紙芝居を読むという行為自体、とてもつらいことだと思いました。それでも私たちに伝えてくださったのは感謝です。吉澤さんのお話はとても力強く心にしみました。

●映画本編を予備知識なく見ましたが、とても感動しました「本当のことを知りたい」という思いで動いてきた親御さんたちの姿に触れることが出来てよかったです。

●「生きる」の映画で、いままでずっと気になっていた大川小の避難についての様子がわかり衝撃を受けました。子どもたちが「津波てんでんこ」で裏山に逃げていれば、こんな悲しいことにならなかったのにと、思いました。裁判を起こされたご遺族と支えた弁護士のお二人のおかげで、これからの防災への取り組みが変化し、守られる命が増えることを強く思いました。

●映画のタイトル「生きる」ということ、観た後に納得しました。残された人が生きるということ、亡くなった人もまた今も残った人の心に生きているということ。岡さん、吉澤さんのお話も感動し考えさせられました。

お問い合わせ

生活協同組合パルシステム東京 政策推進課
paltokyo-seisaku@pal.or.jp