活動レポート

「人」「動物」「環境」が健康であることを目指して――産直鶏肉“までっこ鶏”公開確認会

2022.10.14

パルシステム東京は7月15日(金)、16日(土)の両日、岩手県二戸市で「までっこチキン生産者連絡協議会公開確認会※」を開催。

事前の講習会を修了した監査人と組合員、生産者、関係者など51名が参加しました。

今回の監査品目である産直鶏肉「までっこ鶏」は、岩手県北部の指定農家52農場で生産されており、公開確認会では生産状況、帳票類などについて確認されました。

 

当日のダイジェスト動画を公開しています。ぜひ、ご覧ください。

2022年度公開確認会 までっこチキン生産者連絡協議会

鶏舎中継はオンラインだからこそ実現

までっこチキン生産者連絡協議会の公開確認会は、2013年以来2回目。約9年ぶりの開催となります。

「振り返ると東日本大震災があり、大変な時期がありましたが、今に至ることができ、みなさまには感謝しています。」までっこ鶏を生産する株式会社十文字チキンカンパニーの十文字 保雄社長の挨拶から公開確認会が始まりました。

 

岩手県では2022年2月久慈市の農場で県内初の「鳥インフルエンザ」感染が確認されました。生産者は年間通して「消毒」「清掃」「鶏舎への立ち入り制限」を徹底。現在も継続する感染症対策についてはオンライン中継で確認されました。

 

協議会の会長であり、白樺ファーム農場長の下舘 秀行会長は後に、

「オンライン上だと相手の反応がわかりづらいので、伝わっているかなと、不安な部分はありましたが、中継で育てた鶏を見ていただけて嬉しかったです。」と、鶏舎中継の喜びを話してくれました。

 

会場で鶏舎のライブ中継を見る産地関係者

会場で鶏舎のライブ中継を見る産地関係者

会場で鶏舎のライブ中継を見る産地関係者

までっこチキン生産者連絡協議会 下館会長

飼料の高騰、求められる国内自給率

までっこ鶏は「全飼育過程において飼料に抗生物質と、合成抗菌剤を使用しない」飼育を行っていますが、病気にさせないことを実現するためには飼育環境の管理、成長を促す飼料の工夫が欠かせません。

飼料には鶏の成長に合わせて「餌付飼料」「前期飼料」「後期飼料」「仕上飼料」の4段階で配合を変えており、特徴的なのは「たんぱく質の切り替え」、「飼料の大きさ」です。

 

雛がまだ幼い飼育前半の段階においては、骨格、肺、内臓を作る大事な時期。そのため”動物性たんぱく質”を与えていますが、後期飼料以降は鶏肉独特の臭みを抑制するためにも動物性たんぱく質は配合していません。

 

全飼育期間配合されているトウモロコシなどの飼料には、成長に応じて1回に食べる量を考えて、鶏がついばむのにちょうどいい大きさに調整するといった工夫もされており、鶏の成長と健康を支えています。

成長に合わせて飼料の配合や大きさが調整される

一方「飼料の国内自給率の向上」については多くの監査人から質問が集まり、要望が寄せられました。国内自給率の向上に向けて、現在は仕上飼料に国産の飼料用米を約10%使用しています。

 

「本来はすべての飼料を国産でまかないたいのですが、国内生産量自体低いことや、価格が通常の2、3倍掛かるといったコスト面で課題があります。飼料用米の分量を増やせばいいのではと言われることもありますが、鶏の健康において配合のバランスも必要です。」(生産部 志田氏)

 

物価高の影響で輸入飼料までもが高騰している中、パルシステムへの供給価格を維持しての国産飼料を上げていくことは大きな課題ですが、年に3回JA全農や飼料供給会社との協議を重ねるなど国内自給率の課題に向けて努力を続けています。

栄養のバランスについて「桶の理論」を用いて説明する生産部志田氏(株式会社十文字チキンカンパニー)

「事業」と「働き方」。期待されるアニマルウェルフェア

公開確認会において近年新たに監査項目となった「アニマルウェルフェア(家畜福祉)」の取り組み。監査人の関心もひときわ高く、「室内温度の差は常に一定なのか」「夜間の緊急事態の際の対応は」「と殺での配慮は」など多くの質問が上がりました。

 

アニマルウェルフェアの取り組みとして、「新鮮な空気を循環できるように換気扇、扇風機を増設」、「鶏の成長に合わせて、給餌器の高さや、適温管理の為カーテンの開閉を調整」など、日によって変わる天候も考慮して鶏が心地よく暮らすための環境を整えています。

きめ細かい管理を支えるのは生産者ですが、その「働き方」もまた、監査人の関心を寄せることになりました。

 

農場長である下舘会長は自身の裁量で仕事、休憩をしながら、飼育期間中の約50日間は農場敷地内の管理棟に泊まり、毎日早朝から鶏舎の見回りを行い、鶏に変化がないかを確認しています。

「全飼育過程において飼料に抗生物質と、合成抗菌剤を使用しない」ことを実現するには、清潔な環境と、鶏の健康を管理する生産者の努力が不可欠だが、一方でその働き方を心配する声も多くありました。

 

監査人たちの心配に対して下舘会長は

「私の心配をしてくださってありがとうございます。わりと空舎期間は休めておりますし、飼育期間中も休暇(一時帰宅)を設けています。なによりかわいい雛を毎日見て癒されています。」と鶏への愛情と、監査人への感謝を伝えました。

 

秋田県産のおがくずを使用する鶏舎。

「地域資源循環型農業」とバイオマス発電へのこだわり

株式会社十文字チキンカンパニーでは地域資源循環型の「耕畜連携」にこだわってきました。

たとえば国産の飼料用米を鶏の飼料に使用することで、国産飼料自給率に繋がり、飼育で発生した鶏ふんは資源として、堆肥となり畑などに使うといった循環を生み出します。

 

一方で「肥料需要の季節変動による在庫保管」や「鶏ふん肥料の需要減少」が課題であったが、打開策として研究を始めたのが鶏ふんを活用したバイオマス発電です。

東日本大震災での大きな被害を受け、「原発に依存しないエネルギー社会」のための協議が始まり、2011年FIT法(再生可能エネルギー特別措置法)が成立されたことも後押しとなり、2014年発電事業の参入を表明。2016年から稼働が始まりました。

 

株式会社十文字チキンカンパニーは親鶏の飼育から若鶏の生産・鶏肉の製造まで自社一貫生産を行い、徹底された管理のもと製造年月日を元に経路をたどることができます。バイオマス発電においても、鶏ふんの供給から、発電所の運転・管理までを一貫して行っています。

 

全体監査人である宮北牧場代表取締役宮北 輝氏は、

「国内では資源調達が難しい中、鶏ふんを燃やしてカリウムやリンなど肥料成分を独自で賄っている。この先肥料が手に入るかわからない時代においてこの取り組みはまさに最先端だと理解している。」と称賛しました。

 

環境保全・地域循環型農業の取り組みを称賛する宮北氏(コア・フード牛 生産者)

求められる「伝える努力」「選ぶ力」

公開確認会終盤、全体監査人所見においてコア・フード牛生産者の宮北 輝氏は、

「資源の少ない国で、輸入穀物が高騰している中、手に入らない状況になったときを想定していくことも大事だと思います。飼育している規模が大きいので一概に言えませんが、生産を続けていくためにも近郊の県外のみなさんと自給率を高め、日本をリードしていただけると心強い」と期待を交えたエールを送りました。

 

 

今回の公開確認会で“までっこ鶏”の生産自体が、国内自給率の向上、地域活性や環境保全、原発に依存しないエネルギーを作り出すなど、持続可能な社会に繋がっていることが明らかになりました。

監査人の期待や生産者の向上力は止むことはありませんが、品質を良くした分そのまま価格に反映することはできません。

 

全体監査人であるパルシステム連合会那須 豊氏は

「適正な価格で購入する「選ぶ力」が浸透し、”までっこ鶏”の供給につながったとき、今回の公開確認会の成功の指標になる。」と、生協役職員や監査人たちへの「伝える力」に期待を寄せました。

 

公開確認会最後の挨拶で下舘会長は、

「みなさまから鋭い多くの質問を受けて、これまでの飼育管理について気づかされることがたくさんあり、関心をもっていただいていることを嬉しく思いました。

直接お会いできないことは残念でしたが、みなさまからのありがたいお言葉やご指摘を励みに、今後の飼育管理に活かしていきたいと思います。」と締めくくり、2日間にわたる公開確認会は終了しました。

 

公開確認会が無事終了し、笑顔で手を振る(写真左)下舘会長、中村一寛氏(株式会社十文字チキンカンパニー)