活動レポート

東日本大震災から6年、支援活動を聞いてみよう!『パル未来花カフェ』

2017.5.20

2017年5月20日(土)、パルシステム東京新宿本部で、「パル未来花基金」の2016年度助成グループの報告&交流会「東日本大震災から6年、支援活動を聞いてみよう!『パル未来花カフェ』」を開催しました。

震災復興支援基金「パル未来花基金」は、復興支援を続ける組合員を資金面で応援する基金。2016年度までに、延べ41の組合員グループに総額1千27万6,710円の助成を行いました。  

◆市民活動を継続してきて、見えること、伝えたいこと

報告会の冒頭、まずは、大船渡市で、図書活動を通じた復興支援に取り組む「おはなしころりん」理事長の江刺由紀子さんから、活動の紹介と、支援に取り組む際の工夫をお話しいただきました。

江刺 由紀子(えさしゆきこ)氏プロフィール

江刺 由紀子(えさしゆきこ)氏プロフィール

NPO法人 おはなしころりん 理事長

岩手県大船渡市生まれ。デリー大学文学部仏教学科修士課程修了(インド)。16年間に渡り海外(アジア・中近東・ヨーロッパ)で過ごし、ゲストハウスの運営やボランティア活動に携わる。2003年に帰国、同年任意団体「読書ボランティアおはなしころりん」立上げに参加し、代表を務める。対象は子どもや保護者、高齢者等。市内小学校や各地域公民館、各仮設住宅団地等の連携事業も多く、地域密着型の活動に徹している。2011年の震災の2週間後から、避難所を巡回して子どもや高齢者に絵本の読みきかせをすることにはじまり、途切れることなく復興支援活動を積極的にすすめている。団体は、20歳代から80歳代の女性41名と男性3名で構成され、「地方の普通のおばちゃんおじちゃんたち」という特徴を強みに地元に活動を浸透させている。2016年にNPO法人化。

 

東日本大震災により「おはなしころりん」の活動地域である岩手県大船渡市も甚大な被害を受けました。それ以降、本・読書・読み聞かせを通じた復興支援に取り組んできました。

「大船渡市は、被災地の中でも復興が早く進み、住民は仮設住宅を出て、新たな土地で生活を始めています。一方で、慣れ親しんだ地域を離れ、新たな生活をはじめる中でひきこもりがちになる人々も。」と話す江刺氏。そんな中、思いついたのが「図書で仲間づくりができないか」というアイディアでした。

地域が抱える課題解決の取り組みとして、「子どもの『生きる力』を育むための読書活動」、「高齢化社会に向けて高齢者の活躍の場や生きがいづくり」、「被災地での地域コミュニティの再生支援」を掲げ、読みきかせを通じた課題解決を目指しています。

「地域の課題解決ができたら終わり、ではなく、新たな価値を生み出すことで、地域の強みを作っていきたい」と江刺氏は語ります。

「おはなしころりん」の活動の一部

【左上】移動子ども図書館。厳しい生活の中にいるお母さん達が本を通じて友達になれる場を作っています。

【右上】仮設住宅でのおばあちゃんによる読み聞かせ。「自分がやるばかりではなく、周りの方々、特に高齢者の方々に読み聞かせを教え、それを生きがいにしてもらうことを目指しています」と江刺氏。

【左下】巡回トラックでの本の貸し出し。仮設住宅の方々と一緒に地域の方々も参加しています。

【右下】カンボジアの子ども達に絵本を送るため、絵本の翻訳作業をする大船渡市の子ども達。震災以降、支援されることに慣れている子ども達が「ありがとう」を言う立場から言われる立場になることで、主体性を育てています。

 

また、「パル未来花基金」助成グループへのアドバイスも。

記憶に残るよう活動を言語化することの重要性、被災地に「してさしあげる」のではなく、現地の人々と「一緒にやる」という気持ちをもつこと、活動を継続していくために組織基盤を強化すること、自分たち自身の人材育成にも取り組むこと、仲間同士の共有を大切にすること…などなど。今後、活動を続けていく中で、ヒントとなる言葉をたくさんいただきました。

江刺氏は言います「私たちは普通のおばちゃん。震災後、被災地には支援のスペシャリストがたくさん入ってきてとてもありがたかった。でも、地域の人間自身が自分達の手で地域を作っていくことも大事だと思うんです。地元のおばちゃん達の力を最大限発揮して、これからも地域を作っていきたいです」。

江刺氏の力強く、アイディア溢れるお話しを聞き、私たちも、これから復興支援活動を続けていく勇気とたくさんのヒントをいただきました。

 

◆被災地の“いま”支援・応援を続けるために

認定NPO法人日本NPOセンター 事務局長 吉田健治氏

認定NPO法人日本NPOセンター 事務局長 吉田健治氏

◇講師プロフィール: 吉田 建治(よしだ けんじ)氏(認定特定非営利活動法人日本NPOセンター 事務局長)

1979年奈良市生。立命館大学政策科学部卒。大学在学中の1999年、奈良の古い街並みを保存するNPOと出会い、活動を通してNPOが主体となった地域づくりに興味を持つ。2001年より大阪ボランティア協会職員、2004年より日本NPOセンター職員。情報化支援担当を経て現在は主に市民セクター全国会議をはじめとする研修事業、児童館とNPOをつなぐ「子どものための児童館とNPOの協働事業」、NPO関連法税制改正などを兼任。NPOが多様なステイクホルダーと共に地域課題に取り組む機会作りを進めている

続いて、「パル未来花基金」のアドバイザーをお願いしている、日本NPOセンター・事務局長の吉田建治氏から、支援を続けるための組織基盤強化などについて、お話しいただきました。

日本NPOセンターは、ボランティアやNPO団体からの相談対応、相談を受ける人材の育成、企業や行政と市民活動をつな役割などを担っています。

その中で、「NPOやボランティア団体から、組織運営の相談を受けることが多いです」と吉田氏。支援をしたいという強い思いで始めることの多いボランティア活動。しかし、活動する中で、コストや仲間作りなどに悩み、継続の難しさにつきあたる団体が多いと言います。

「継続のために考えていきたいのは『組織基盤強化』です。組織基盤強化を船に例えると、活動が積み荷、団体の組織基盤が船です。積み荷は船にのせないと届けられませんが、運ぶ船のことは後回しになりがちです。単発のプロジェクトであればそれでもいいかもしれない。しかし、長く続けるには、船のことを考えなければなりません。」と吉田氏。

「どんな船が必要かは、団体によって違う。皆が皆、タンカーを目指さなければいけないわけではなく、TPOに合わせた船を考えいきましょう」と、組織基盤強化の重要性を呼びかけました。

また、パル未来花基金のアドバイザーとして、助成グループの活動のどういう点に注視しているかをお話しいただきました。

被災地の現状やニーズ・課題を捉える「現状認識」、課題に対応するための「計画性」、計画に「実現可能性と将来性」があるか、課題意識やニーズとやろうとしていることに「整合性」があるか…、それらを総合的に判断して、団体の活動を見ていると言います。

その上で、「皆さんの活動には価値がある!」と力強いエールも。助成グループの活動の成果や課題、悩みを共有した上で、「支援する→される関係から、ともに歩む関係になりましょう」と、震災直後の支援から、新たな支援の段階にうつる時期がきていることを訴えました。

◆2016年度パル未来花基金助成グループ 活動報告・意見交換

パル未来花基金」助成グループからの活動報告は、グループごとに設けたブース(テーブル)を参加者が自由にまわり、交流を行う形式で実施しました。

より多くのグループの報告を聞いていただくため、一グループの報告・交流時間は約10分。そろそろ次のグループに移動をお願いします」という事務局の声かけも聞こえないほど、どのグループも熱心にお話しをされていました。

※2016年度助成グループ「いっしょに!東北」は、都合により不参加でしたが、会場に活動写真のアルバムが展示されました。

パルシステム東京では、「3.11を忘れない」を基本視点に、東日本大震災被災者支援のため、これからも組合員とともに様々な支援活動に取り組んでいきます。

パルシステム東京震災復興支援基金「パル未来花基金」について

東日本大震災から7年。私たちは被災された方々に寄り添い、「3.11を忘れない」をキーワードに様々な復興支援に取り組んできました。
震災から6年が経った今も求められるのは、多くの組合員が情報を共有し、学びあうこと。「自分もなにかできるはず」と思うこと。そして、その思いを実践につなげることです。
この実践を資金面で応援するため、2014年に「パル未来花基金」を設立しました。継続して、被災地の支援に取り組む組合員を資金面で応援するため、毎年、様々な支援活動に助成をしています。
2016年度は、コンサートや祭りなどの復興応援イベント、被災者の手作り小物の販売、仮設住宅や復興住宅での交流などに取り組む13グループに、計400万円を助成しました。

※震災復興支援基金の愛称「パル未来花基金」は、組合員公募により決定しました。「明るい未来を信じ、新しい花を咲かせるために、みんなで助け合い、力を合わせて日々努力していく気持ち」という意味を表しています。 ※基金の原資は震災復興支援積立金を活用しています。