活動レポート

「JAつくば市谷田部公開確認会」を開催 | 原木しいたけと里山の再生に挑む産地を確認

2016.10.13

パルシステム東京は9月27日(火)、28日(水)の両日、茨城県つくば市で「JAつくば市谷田部公開確認会」を開催しました。

関心の高さから150名を超す参加が

公開確認会は、生産者と消費者の二者が産地で生産状況を確認するパルシステム独自の制度です。1999年にスタートし、これまでの開催数は2015年度末で累計119回に上ります。

「JAつくば市谷田部公開確認会」は、パルシステム東京主催により、JAつくば市谷田部本所会議室で開催しました。事前の講習会を修了した監査人と一般参加の組合員、生産者、生協役職員、関係者など152名が参加し、監査品目の生しいたけ(原木栽培)の栽培状況や帳票などについて確認しました。今回の公開確認会は16年ぶり、2回目の開催となります。

唯一の「原木しいたけ」産直産地

開会にあたって野々山理恵子理事長は「私たちの要望にこたえ、公開確認会を引き受けてくれた産地に感謝します。パルシステムの原木しいたけの産地はここだけです。参加数の多さは関心の高さの表れです。東日本大震災で大きな被害を受けながら、里山再生など前向きな取り組みを続けてきたJAつくば市谷田部との関係を次につなげていく会としたいです」とあいさつしました。

 

それを受けて、横田伊佐夫組合長は「福島第一原発事故から5年が経ちました。放射能汚染と向き合ってきた産地の取り組みや思いをしっかり見ていってほしいです」と語りました。

 

(写真:原木しいたけの生産者・飯泉厚彦さん)

 

産地からのプレゼンテーションでは、産直部会の小川保副部会長より組織概要や事業内容、環境保全型農業を実践し、土づくりと減農薬で安全性の高い作物を作ってきた経緯やこだわりが紹介されました。原木しいたけを生産する飯泉厚彦さんからは、菌を植えてから約1年半をかけて育てる原木しいたけの特徴や、栽培基準・管理などが紹介されました。

 

JAつくば市谷田部では、原木の段階で放射能を検査して受け入れをしています。しかし現在、原木市場は全体的にひっ迫、高騰しており、北は岩手県から南は九州まで、さまざまなところから手配をしても足りない状況にあります。もともとは、福島県の阿武隈山地から原木の多くを調達していましたが、原発事故の影響により、仕入れができなくなった経緯があります。「それにより福島県や茨城県の原木生産者はどんどん廃業していき、所有していた里山は汚染されたまま廃れる一方となっているのです」(飯泉さん)。

 

なお、震災当時は、樹皮表面についていた放射能も洗浄すれば大きく減らすことができましたが、現在は幹部に入っており、外側洗浄は効果がなくなってしまっています。それでも低減の努力を続けるためには、ひっ迫する原木手配をあきらめないこと以外になく、それにより、検出値を抑えることを実現しています。

 

当日は実際に、ほ場(中野きのこ園)を訪問し、パルシステムが震災復興基金で支援し、建設された人工ホダ場ハウスやホダ木のロット管理のようすを視察しました。また、生産者は原木を育む里山を自ら再生していくために、2013年9月に「NPO法人里山再生と食の安全を考える会」を、生協、農協ほか43団体で結成しています。子どもたちに森林体験を提供し、また発酵堆肥の開発などにも取り組んでおり、実際に活動している広場で説明を受けました。

人工ホダ場ハウスで説明を受けました

子どもたちが森林体験するフィールド「森のひびき」を視察

里山との共生を目指して

監査所見の発表では「原木栽培は里山との共生にあることがよくわかりました」「植菌機の導入など効率化の追求に挑戦しながら、栽培・温度管理を徹底するなど生産努力が見て取れました。他の産地のよい参考になると感じました」などの所見がありました。

 

また、生産者監査人のパルシステム生産者・消費者協議会・嶋田清治生産者幹事(千葉県・農事組合法人村悟空)は「部会の会合を定期的に持ちつつ、NPOや体験学校も運営するなど、なかなかやれるものではありません。検品については二重のチェックを行っているとのことでしたが、第三者の目を入れることで、さらなる品質向上につながるのではないでしょうか」と述べました。

(写真:生産者監査人の嶋田清治さん)

 

監査人のまとめとしてパルシステム連合会・島田朝彰産直部長は「東日本大震災により栽培方法や作業内容に変化が大きく生じましたが、若手生産者が育ち、供給品のトレースが整備されています。産直部会を支える農協のレベルも上がっていると感心しました。たゆまぬ放射能低減の取り組みと合わせて、消費者の購入の判断となる“公表の仕組みづくり”を進めてきたことは大いに評価できます。原木調達や低減策が限界を迎えているなか、いま一度、今後について、組合員とともに検討が必要ではないかと考えます」と、締めくくりました。