活動レポート

「木育」ってなに? ウッドスタート宣言園「ぱる★キッズ府中」の取り組みを紹介!

2019.10.23

9月23日(月・祝)、都民ホール(新宿区)で開催された「森のめぐみの保育環境セミナー2019(*)」にて、パルシステム東京の東京都認証保育所「ぱる★キッズ府中」の根本園長が登壇し、「木育」の導入と実践について報告しました。

 

木のおもちゃや内装木質化といった「モノ」の観点ではなく、身のまわりの小さな自然を通して得られる子どもたちの気づきや感動といった「コト」の視点で捉えられた「木育」エピソードに、会場の参加者(おもに保育関係者)からは大きな共感の拍手が寄せられました。

 

*主催:東京都 / 特定非営利活動法人芸術と遊び創造協会 / 東京おもちゃ美術館

子どもたちに「木育」を伝えるには? ぱる★キッズ府中の実践報告より

住宅街にまん中にある「ぱる★キッズ府中」ですが、保育フロアには多摩産材のスギ床材をふんだんに取り入れるなど、2014年の設立当初から「木育」を保育理念の一つに掲げて運営されてきました。

※運営母体の生活協同組合パルシステム東京は2015年にウッドスタート宣言。

しかしある日、職員から発せられた「0・1・2歳児でできる木育って何ですか?」の質問に、当時の根本園長は具体的な答えを持ち合わせていなかったといいます。

 

施設や備品の充実ではなく、日々の保育の中でできる「木育」はないのか、と手探りで調べていたときに出会ったのが「ウッドスタート宣言園」でした。

 

これを機に当時の常勤職員6人が「木育インストラクター」「保育ナチュラリスト」の資格を取得したことが、その後の木育活動の原点になったのです。

―「『木育』の『木』を、木そのものではなく、大きな自然としてとらえて活動してよいのだ、と気づいたとき、目の前がパーッと開けたように感じました。受講後の帰り道、一緒にいた職員同士で『これもしてみたい』『こうすればもっと楽しめる』と次々にアイディアが湧いてきました」

その後、難しく考えて立ち止まってしまうよりも、どんどん実践していこうという機運が広がり、自然遊びの本や図鑑を次々に増やして、職員同士でも散歩を通して体験できることを共有していきました。

「一番変わったのは子どもたち。公園での遊びはボール遊びやお砂遊びが中心だったのが、芝生に寝転んでみたり、空に浮かぶ雲を眺めてみたり、木に抱き付いてみたり、虫を探してみたり、そんな姿が見られるようになりました」

以前は室内にクモがいると怖がって大騒ぎだった子どもたちですが、今では「虫さんもおうちに帰るんだよね」と余裕の対応になっているという、ちょっとほほえましいエピソードも。

「食育×木育」「アート×木育」? ぱる★キッズ府中の実践報告より

またある日のこと。「ぱる★キッズ府中」で「食育」の一環として、育てていた大根にあおむしがいっぱい。 はじめのうちは割りばしで外へやっていたものの、次々に蝶が卵を産み付けていきます。

 

「せっかく園に来てくれた命。大根を育てるのはまた今度にしよう」と決め、「リアルはらぺこあおむし」を観察することに。初めは恐る恐るだった子どもたちも、羽化して見送る頃には「さようならー!また来てねー!」とやさしい眼差しを見せてくれました。

 

このほか、産直産地の田んぼから来たメダカのビオトープや、しいたけ栽培の観察など、パルシステムの強みとも言える「食育」と絡めた「木育」の取り組みとその相乗効果についても報告がありました。

木育の取り組みを進める中では、「これも木育と言ってしまってよいのだろうか?」という一抹の不安も。そんな中、出会ったのが外部講師の先生たちだったと振り返ります。

 

講師の先生の指導のもと、散歩先で見つけた落ち葉や松ぼっくりなどの素材でアート作品を作る取り組みでは、こんなに長い時間まったく飽きることなく集中できるんだ!と子どもたちの可能性を再発見。
また、研修の受講内容などをもとに手探りで進めてきた「自然遊び」にも外部講師の先生がよい刺激を与えてくれました。

 

「子どもたちと同じ視線で体験してみると、いつもの公園が自然の宝庫に見えてきました。保護者の方とも一緒に体験することで『木育』を理解してもらうよい機会になりました」

「木育ってなに?」その疑問の答えとして、根本園長は次のような答えに辿り着いたと締めくくりました。

 

「身のまわりの自然を通じて、自分とは違う多様な世界観であったり、それらを大切に思う心を育てていくことではないかと思います。0・1・2歳児には遠くの山や森に思いを馳せることはなかなか難しいかもしれません。けれど、いつものお散歩や活動で出会う小さな自然のカケラが、子どもたちの中で大きく育ち、いつか遠くの自然についても考え、行動できるようになってくれたら…。そのための入り口は何でもいい。それがぱる★キッズの『木育』です!」


▲セミナーのラストバッターとして実践報告をする根本園長(写真右)

▲セミナーのラストバッターとして実践報告をする根本園長(写真右)

▲セミナーのラストバッターとして実践報告をする根本園長(写真右)

▲東京都の面積の4割を占める森林の利活用を考える展示も。

▲木育おもちゃの展示には「ぱる★キッズ足立」の稲垣園長も夢中!

▲木育おもちゃの展示には「ぱる★キッズ足立」の稲垣園長も夢中!

▲木育おもちゃの展示には「ぱる★キッズ足立」の稲垣園長も夢中!

今後とも「ぱる★キッズ」での「木育」の広がりと、子どもたちの健やかな育ちに、温かいご声援を!

(取材・撮影:パルシステム東京広報室)