活動レポート

東日本大震災復興支援シンポジウム「考えよう、応援しよう、震災後のふくしま」

2017.3.11

2017年3月11日(土)、東日本大震災復興支援シンポジウム「考えよう、応援しよう、震災後のふくしま」をパルシステム東京新宿本部で開催し、組合員・役職員108名が参加しました。

基調講演:菅谷昭(すげのや・あきら)氏

「チェルノブイリ30年余、福島5年余が経過して~今、改めて考え、行動につなげる必要性について~」

「チェルノブイリ30年余、福島5年余が経過して~今、改めて考え、行動につなげる必要性について~」

講師:菅谷 昭(すげのや・あきら)氏

長野県松本市長(2004年~現職)フランシスコ・スカリナー勲章(ベラルーシ共和国 国家最高勲章)

信州大学医学部卒業後、トロント大学留学(甲状腺疾患の基礎研究)

1991年~チェルノブイリにおける小児甲状腺検診等、現地入り7回

1996年~2001年ベラルーシ共和国における医療支援活動

福島の原発事故からわずか6年…。菅谷氏がそう話すのは、30年余がたった今も、子どもたちの健康調査を続ける、チェルノブイリ原発事故で被災したベラルーシなどの国と比較してのこと。

「ベラルーシでは、チェルノブイリ原発事故後に取り組まれた子どもたちの検診データを基に、汚染地域に暮らす子どもたちを対象とした、長期保養の仕組みが作られました」と、長期のデータ蓄積が国による対策につながった事実を紹介。

「現時点で、福島の県民健康調査で発見された甲状腺ガン患者の罹患要因が原発事故による放射能の影響であるかどうかはわかりません。よって、すぐに結論を出さずに、定期検診にもっと力を注ぎ、疫学的事実を集積することが必要です。」健康調査継続の必要性を訴えた上で、保養の大切さにも言及。

「汚染の心配のない地域で、長期間、生活することで、体内に蓄積した放射性物質を排出できることが、ベラルーシなどでの保養生活の実績でわかっています。」

昨年夏、ベラルーシを訪問した菅谷氏は、現地の医師に、「なぜ日本では保養に取り組まないのか?」と聞かれ、答えにつまったとも話します。

「経済的にはけっして豊かとはいえないベラルーシですが、事故後に生まれた子どもたちの保養を、国の負担で続けています。」私たちが国に対し、「健康調査の継続や保養を」と声をあげる行動は、福島の子どもたちへの力強い支援につながります。

菅谷氏の執刀で健康を回復したベラルーシのカーチャさん

菅谷氏の執刀で健康を回復したベラルーシのカーチャさん

 

福島第一原発事故から6年が経ち、風化が叫ばれているところですが、菅谷市長のお話しをうかがい、「忘れない」、そして「あきらめない」ことを心にしっかりもって、今後、様々な活動を進めていかなければならない、と思いを新たにする時となりました。

菅谷氏の講演後、東日本大震災が発生した時刻である14時46分、震災にて犠牲になられた方々に謹んで哀悼の意を表し、黙祷を捧げました。

2016年度「福島支援カンパ」贈呈先団体 活動報告

パルシステム東京では、2012年度に、福島で、子どもたちを放射能から守る活動に取り組む団体を支援する『福島支援カンパ』が設立し、現在まで継続しています。2015年度までのカンパ累計は3,702万880円。多くの組合員がカンパと共に福島へ「忘れない」思いを届け続けています。

シンポジウムでは、2016年度福島支援カンパ贈呈先の6団体が、活動報告を行いました(50音順)

◆認定NPO法人 いわき放射能市民測定室たらちね 

~甲状腺検診を行い、保護者の不安を軽減~

鈴木薫 事務局長

~甲状腺検診を行い、保護者の不安を軽減~

放射能の影響に対する市民の不安に応え、甲状腺検診や食材、土壌の放射能検査などに取り組んでいます。

2015年度から開設した「ベータ線測定室」は、これまでガンマ線測定器ではできなかったストロンチウムやトリチウムの測定も可能に。海洋調査、地域の人々の測定活動や勉強会のサポートをしています。

2017年5月には、診療所「たらちねクリニック」の開設も予定。

◆認定NPO法人 沖縄・球美(くみ)の里

~放射能の影響を軽減させる保養活動~

向井雪子 理事長

~放射能の影響を軽減させる保養活動~

子どもたちへの放射能の影響を軽減させるため、沖縄県の久米島にある保養施設「沖縄・球美の里」で延べ2,400名近い子どもたちの滞在を受け入れています。

海をはじめ豊かな自然のなかで子どもたちが遊び、笑い、久米島の方々とつながりを持ちながら行われる保養を、年間を通じて行なっています。

◆一般社団法人 子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト

~生活圏の放射線量調査と情報発信~

石田伸子 理事長

~生活圏の放射線量調査と情報発信~

日常生活での放射能防護のため、通学路や遊び場などを測定した線量マップの作成や、中学生向けの放射能に関する学習会、福島の実情や保養情報、放射線防護のための知識・各地の取り組みを伝える情報誌「こどけん通信」の発行を継続。

甲状腺検査縮小議論に対する要望書も提出しています。

◆NPO法人 ハートフルハート未来を育む会

~親子のストレス緩和や、地域の支え合いをサポート~

成井香苗 理事長

~親子のストレス緩和や、地域の支え合いをサポート~

臨床心理士、保育士、保健師などの専門職による団体です。

親子のふれあいを大切にした遊びと語り合いの独自プログラムを通じ、親子のストレス緩和と低線量汚染下の子育て中の親同士の支え合いをサポートしています。

 

◆NPO法人 ふよう土2100

~被災地の障がい児ケアと親たちの支援活動~

里見喜生 理事長

~被災地の障がい児ケアと親たちの支援活動~

行政の支援が届きにくい、被災地での障がい児ケアにスポットをあてた活動をしています。

交流サロンで悩みの共有や相談、障がい児の一時預かり事業などで、負担の大きい親たちを支え、一人ひとりが地域でいきいきと過ごせる環境づくりに取り組んでいます。

◆NPO法人 まつもと子ども留学基金

~放射能の心配のない生活を子どもたちに提供~

植木宏 理事長

~放射能の心配のない生活を子どもたちに提供~

被災地の子どもたちが安心して遊び、学び、生活できる場所づくりをめざして、長野県松本市で設立した保養留学プロジェクト。放射能への不安を抱える子どもたちを松本市内の寮やホームステイで受け入れています。

来年度は、松本市の協力の下、家族単位での移住を支援する活動も計画しています。

■参加者からの感想

・震災後6年経ったが、まだまだ原発被災者のおかれた環境はつらいものが多いと知りました。”フクシマ”の問題は国民全員の問題だと思います。決して忘れずに、これからも自分のこととして考え、可能な限り、支援していきたいと思いました。

・原発被害のことは、新聞などを気にかけていますが、やはり実際にお話しをうかがうとより深く自分の中に入ってきます。このような悲惨な状況を繰り返さないために、原発はなくしていかなければならない。本当にそう思います。

・日常生活の忙しさに埋もれて震災復興支援が必要な方々に対して意識を向ける時間が少なくなっていました。改めて、自分なりにできることに取り組んで行きたいと思います。ありがとうございました。

・カンパ贈呈団体の活動内容をメンバーの方から直接説明していただき、内容が良くわかりました。

会場では、被災地支援を続ける団体による応援商品の販売も

会場では、被災地支援を続ける団体による応援商品の販売も

会場では、被災地支援を続ける団体による応援商品の販売も

福島有機農業生産者の人参ジュースなども人気

パルシステム東京は、「3.11東日本大震災を忘れない」を基本視点に、復興支援活動をさまざまな形で行なっています。

震災復興支援基金(パル未来花基金)、福島の子どもたちを放射能から守る団体への組合員カンパ、保養企画、シンポジウム、スタディツアー等、これからも組合員とともに、風化させないための多様な支援活動を継続していきます。