基本情報

地域福祉政策

生活協同組合パルシステム東京 地域福祉政策

何よりもまず一人ひとりが大切にされる社会でありたい。自分たちが望むくらしや未来は、ほかでもない自分たち自身の手で、つくっていくことができます。子どもから大人まで様々な境遇の人たちが手をとりあって、楽しく、笑顔も涙もある、身近な地域の輪を共感とともに広げていきます。

【パルシステム東京が目指す地域福祉コミュニティの姿】

ともにつくろう 笑顔ひろげる 身近な地域

1.はじめに

 高齢者も若者も、障がいのある人もない人も、誰もが住み慣れた地域のなかで、安心して暮らし続けていくことが、私たちの願いです。そして、生協は助けあいによる生活の安定と向上をめざす組織です。生活協同組合の父と呼ばれた賀川豊彦は、「一人は万人のために、万人は一人のために」を生協運動の理念として掲げました。

 それぞれが自立を目指し支え合いながらともに心豊かな生活ができるよう、すべての事業と活動に福祉の視点をおいて、生協本来の助けあいの精神を発揮し、ひとりでは解決が難しいくらしの課題に取り組んでいくために、私たちはここにパルシステム東京 地域福祉政策を策定します。

2.なぜ、今、地域福祉政策なのか

 パルシステム東京は「食べもの」「地球環境」「人」を大切にした「社会」をつくります の理念に基づき、組合員が主体となって活動をすすめてきました。生協は地域に暮らす人のあつまりであり、協同組合原則*1で示されているように、コミュニティの持続可能な発展の為に活動することが求められています。

 地域の課題が福祉の課題とかさなりつつある今日において、これまでの福祉政策と地域コミュニティ政策の二つの政策を統合することは、地域社会の実情にあわせた取り組みをすすめていく上で、意味は大きいと考えます。

 

 今後の社会動向は、人口が減少していくなか、少子高齢化は更にすすんでいきます。高齢者、認知症、単身高齢世帯の増加による介護問題をはじめ、待機児童、ひきこもり、子育て層の孤立、貧困格差、障がい者のくらしの中にある様々な障壁など地域社会が抱える福祉課題は山積みです。地域コミュニティの崩壊が、これらの課題を増幅させてしまったともいえます。国の社会保障も、財源不足により給付と負担の見直しがすすみ、自助と互助が果たす役割は大きくなると言われています。また、世界的気候変動がすすむなかで、様々な災害はいつ我が身に降りかかるかわかりません。地域の防災・減災はくらしの大事な課題で、日頃からの顔の見える、お互いさまの関係性が益々重要になっています。

 

 誰もが住み慣れた地域の中で、安心して生き生きと暮らし続けていくことが、誰にも共通した願いであることから、これからの地域は、国と行政だけでなく民間企業や諸団体、地域住民とが一緒になって福祉課題の解決をはかる「地域共生社会」の視点が重要です。

 助けあいの組織でもある私たちの強みは、地域の生活者として組合員がいること、地域のくらしに直結した事業を行っていることです。組合員の力による活動、福祉の視点を持った事業というパルシステム東京の強みをいかし、幸福な状態という意味での福祉:ウエルビーイング(well-being)を目指します。また、いつまでも健康であり続けること、自分らしく生きていくことに、生協は寄与していくべきだと考えます。

 

*1 国際協同組合同盟 (ICA) は、100周年記念大会(1995年9月、マンチェスター・イギリス)で、「21世紀に向けた世界の協同組合の活動指針を示す新しい協同組合原則」を採択しました。その中の「第7原則」で「コミュニティへの関与」が謳われています。

3.これまでの振り返り

(1) 地域コミュニティ政策の振り返り

 2011年に策定された地域コミュニティ政策は、2020ビジョンに掲げたスローガン「ともに つくる くらしと地域」の中心的な役割をになうものとして、3つの視点、①パルシステム東京を地域に知ってもらう取り組み ②組織としてのコーディネート力の必要性 ③地域に目を向ける人が育つ環境づくりが掲げられました。その中で他団体との連携、施設の活用や見守り協定、お米の出前授業などについては進捗したと評価できます。

 しかし、「コーディネート力」やそのベースとなる「地域に目を向ける人づくり」については、不十分でした。組合員が50万を越えるなかで、組合員一人ひとりが、様々な形で活躍できる環境づくりが地域社会から求められています。

(2) 福祉政策の振り返り

 2012年に策定された福祉政策は、3つの領域、①地域のライフライン「食へのこだわりを通じて」 ②地域包括ケア「福祉事業に生協の視点を生かす」 ③地域のネットワーク「孤立させない地域ネットワークづくりへの寄与」 に区分され、事業面と活動面で取り組むべき政策課題が示されています。その中で、高齢者の支援につながる商品やサービス(きなりセレクト、ケアサポートなど)の導入や改善がすすみました。また、下馬(世田谷区)や辰巳(江東区)をはじめとした地域デイサービスの広がりや、保育ニーズに応えたぱる★キッズの開園など行政との協力もすすみました。

 一方で、地域福祉を推進する人材の育成については不十分でした。また、障がい者支援については、専門性と事業規模、人員配置の課題もあって、取り組みを広げることが難しく、訪問介護事業の一部の範囲にとどまっています。

 社会が多様化していくなかで、あらたな福祉課題も表面化してきている今日において、それら課題の解決に向けて、生協として地域と関わり、事業と活動が連携し地域福祉に取り組むことが必要です。

4.本政策で大切にしたい3つのこと 

(1) 人づくりの重要性
 ① 地域に目を向ける組合員の参加参画を促す仕組みづくり(学びの場、企画の拡充)
 ② 地域をよく知って、ネットワークで「つなぐ」ことのできる人の掘りおこしと育成

 

(2) パルシステム東京の総合的な力で政策推進
 ① パルシステム東京のもつ事業と活動、ネットワーク、情報、あらゆる資源の活用
 ② パルシステムの強み(商品、組合員・役職員、諸団体や行政との連携など)を活かした地域づくりへの寄与

 

(3) 政策の組織内(組合員、役職員)の浸透を重視
 ① インパクトのあるメッセージと、知って、学んで、考えて、行動に移す仕組みづくり
 ② 政策の定期的な振り返りと評価

5.実現にむけた取り組み   

(1) 食と福祉を中心に、笑顔あるくらしをつくります。
 1. たべる楽しみを通じて、子どもの心と身体の健やかな成長をはぐくみます。
 2. 健康づくりを通じて、健康長寿をめざします。
 3. 尊厳を大切にした介護で、できることを増やす自立した生活を支えます。
 4. 異世代交流を大切にした共生ケアを推進します。

 

(2) 学びを大切にして、地域に目をむける人づくりをすすめます。
 1. 学びの機会をつくり、「認めあい」「学びあい」「支えあい」を増やします。
 2. 人と人を結び、コーディネートできる人材を増やします。
 3. 参加や参画の入り口となる機会をつくります。

 

(3) みんなが主役になる身近な地域づくりを応援します。
 1. ふれあいの機会や場づくりをすすめます。
 2. 人と地域の資源をつなぐネットワークづくりを強めます。
 3. センターや福祉施設を、その地域の特性に合わせたコミュニティの拠点にします。

6.おわりに

 目まぐるしく社会情勢や環境が変化するなかで10年後の社会を正確に見通すことは難しく、この政策も十分とは言えません。具体的な取り組みは、本政策に結び付けた中期計画や年度方針でわかりやすく示し、検証しながら見直していきます。

 一人ひとりが小さな一歩を踏み出し、手を取り合うことで、私たちが実現したいくらしや地域をつくっていくことができる、そのことを胸にあゆみをすすめていきましょう。

以上