お知らせ

「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」に対する意見書(パブリックコメント)を提出しました

 2026年7月9日、パルシステム東京は「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」に対する意見書(パブリックコメント)を提出しました。

2026年7月9日

今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)に対する意見

生活協同組合パルシステム東京
代表理事 理事長 西村 陽子

 私たちパルシステム東京は、平和を基本とし「『食べもの』『地球環境』『人』を大切にした『社会』をつくります」を理念に掲げ、約54万人の組合員が、安心して暮らせる持続可能な社会の実現を願い、事業と活動をしている生活協同組合です。東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、2012年に「エネルギー政策」を制定、2023年にはパルシステムグループの「環境・エネルギー政策」策定とともに「環境方針」を改定し、2030年までの温室効果ガス削減の具体的な目標値を掲げ、持続可能な社会の実現を目指して活動しています。これまでも事業活動や組合員家庭における省エネルギーの推進、脱原子力発電運動、産地や地域と協同した再生可能エネルギー普及活動に取り組んでまいりました。

 次世代へつなぐ暮らしの安全を守るため、政策の実効性・整合性・安全性の観点から、原子力依存を前提としない、再エネ・省エネ・蓄電を中心とした戦略への転換を強く求め、抜本的な再検討をお願いしたく意見を申し述べます。

 

 

1.電力需要増の将来的な見通しについては精査が必要であり、現時点で建て替えの数値目標を提示することは拙速と考えます。

【該当箇所】2.各課題への対応の方向性と行動指針(0)原子力発電の見通し・将来像

 

 本案ではGXの進展に伴う電化、生成AIの普及拡大に伴うデータセンター、半導体工場の増加による大幅な電力需要増を前提に、化石資源の乏しさから原発の重要性を取り上げ、原発建て替えの数値目標が示されています。一方で、AIによる省エネ化や技術進展、日本における急速な人口減少と高齢化の進行が電力需要を押し下げる可能性があること、さらにEUがデータセンター等への省エネルギー策を導入したように、日本においてもエネルギー需要の低減に向けた制度設計が必要であると考えます。こうした電力需要予測の精査、需要低減に向けた制度検討が不十分ななかで、原発の建て替えを前提化し、数値目標提示をすることは拙速と考えます。

 

2.2030年に原子力比率20%は達成不可能であり、政策目標の見直しを求めます。

【該当箇所】2.各課題への対応の方向性と行動指針(0)原子力発電の見通し・将来像

 

 政府は2030年に原子力比率20〜22%を目指すとしていますが、必要な発電量から逆算すると約3,200万kWの稼働容量が必要となります。しかし、未廃炉原発36基のうち、原子力規制委員会の審査に合格した原発は20基にも満たず、2030年までに「約30基の再稼働」という前提は成り立ちません。達成可能性の低い数値目標を据えたまま政策をすすめるのではなく、早急に、国内の豊富な資源を最大限に生かした再エネ・省エネ・蓄電の拡大を中心とした現実的な脱炭素戦略へ転換すべきです。

3.原発の経済性は大幅に悪化しており、高コスト体質となっていることから、原子力政策の見直しを求めます。

【該当箇所】2.各課題への対応の方向性と行動指針(0)原子力発電の見通し・将来像

 

 原子力は「安価で安定的」とされておりますが、近年の建設費は2020〜2025年で年率4.3%上昇し、2040年には1.4兆円規模に達する試算が示されています。国際比較でも、日本の原発コスト推計だけが低く見積もられており、実際の国内電力会社の原発単価は過去の2〜3倍に上昇しています。さらに、福島第一原子力発電所の処理をめぐっては、発生する放射性廃棄物量が通常炉の891倍に達し、費用も総額21.5兆円規模と試算されています。建設・維持・廃炉など原発に関わるコストは、想定以上に高コスト体質となっていることを認め、原子力政策自体を見直すべきです。

 

4.再稼働の加速や既設炉の最大限活用、次世代革新炉開発の推進について見直しを求めます。

【該当箇所】2.各課題への対応の方向性と行動指針(2)再稼働の加速・既設炉の最大限活用

 

 生協はかねてより、原子力発電が抱える問題として、事故リスクなど安全性に懸念があること、使用済み核燃料の貯蔵率がおよそ80%に達し、その処理や高レベル放射性廃棄物の最終処分に関し見通しが立っていないこと、安全対策費や建設コストが上昇していること、発電コストに経済合理性が見いだせないこと、そして原発の事故処理・賠償費用、廃炉費用を託送料金へ上乗せする仕組みが採用され、将来的な消費者負担の肥大化が懸念される制度となっていること等を指摘してきました。これらの問題はいまだ解決されておらず、むしろ今回示された再稼働の加速や既設炉の最大限活用という方針により問題が膨らむおそれがあります。また、次世代革新炉の開発・設置について、福島第一原子力発電所の廃炉が見通せない中、今新たに原子力発電所を開発することは少なくとも今世紀末まで原子力発電を利用し続けることを意味しており、放射性廃棄物の処分や廃炉などで将来世代に膨大なリスクとコストを負担させることになりかねません。以上のことから、再稼働の加速や既設炉の活用、次世代革新炉の開発・設置は拙速にすすめるべきではなく、推進を見直すべきです。

 

5.政策決定を透明化するとともに、若者など多様な主体の参画と対話を求めます。

【該当箇所】2.各課題への対応の方向性と行動指針(1)原子力を長期的に活用していく上での大前提

②立地地域との共生 ③国民各層とのコミュニケーション

 

 本案は第7次エネルギー基本計画に則り原子力推進を具体化するものですが、政策形成過程における国民的議論や情報公開が十分とはいえません。原子力政策は立地地域だけでなく電力消費地の住民も関わる内容であり、エネルギーの使い方や消費者の費用負担の観点ではすべての国民に影響を与えることから、若年世代を含む、電力消費地の住民や消費者団体、市民団体など多様な関係者との対話強化や意思決定への参画機会の創設、そして政策決定プロセスの透明化と公平性の担保を求めます。

以上

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