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第7次エネルギー基本計画(案)に対する意見書(パブリックコメント)を提出しました

2025.1.22

2025年1月22日、パルシステム東京は第7次エネルギー基本計画(案)に対する意見書(パブリックコメント)を提出しました

 

 

2025年1月22日

経済産業大臣
武藤 容治 殿

生活協同組合パルシステム東京
代表理事 理事長 松野 玲子

第7次エネルギー基本計画(案)に対する意見

 私たちパルシステム東京は、平和を基本とし「『食べもの』『地球環境』『人』を大切にした『社会』をつくります」を理念に掲げ、約54万人の組合員が、安心して暮らせる持続可能な社会の実現を願い、事業と活動をしている生活協同組合です。
 東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、2011年に「エネルギー政策」を策定、2023年にはパルシステムグループの「環境・エネルギー政策」策定とともに「環境方針」を改定し、2030年までの温室効果ガス削減の具体的な目標値を掲げ、持続可能な社会の実現を目指して活動しています。これまでも事業活動や組合員家庭における省エネルギーの推進、脱原子力発電運動、地域と協同した再生可能エネルギー普及活動に取り組んでまいりました。
 このたび発表された「第7次エネルギー基本計画(案)」では、2040年度の再生可能エネルギーの電源構成比を4~5割程度に引き上げる一方で、エネルギーの安定供給と脱炭素化の推進などを理由に原子力電源の比率を引き上げる方針が示されました。
 第7次エネルギー基本計画が、原子力にも化石燃料にも依存しない、次世代につなぐ脱炭素社会のあるべき姿を描いたものとなるよう、以下意見を申し述べます。

 

【P82 7.国民各層とのコミュニケーション】
1. エネルギーに関する国民各層の理解促進について、啓発強化を求めます。
 気候変動問題は国民の命やくらしに関わる重要な課題にも関わらず、総合資源エネルギー調査会などのエネルギー政策の決定プロセスに、多様な立場の国民の参加と活発な意見交換がなされなかったことに対し遺憾の意を表します。
 2024年11月にパルシステムグループの組合員を対象としたオンラインアンケートを実施し、「エネルギー基本計画」について4,099人から回答を得ました。名称を聞いたことがある人は48%、見直し内容を知っている人は7%にとどまり、過半数が「内容を知りたい」と回答し、エネルギー政策に関して多くの消費者が関心を持ちながらその内容が国民へ伝わっていない実態が分かりました。エネルギーに関する国民各層の理解促進については、各省庁と連携した「伝わる」啓発強化を求めます。

 

【P18(2)省エネルギー/P20(4)産業・業務・家庭・運輸部門に求められる取組】
2. エネルギー需要量の大幅縮小を可能とする社会の構築を目指し、支援制度の拡充を求めます。
 脱炭素社会の実現のためには、エネルギー需要量を縮小させることが重要です。2023年に開催された「第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)」で採択された決定文書では、省エネ改善率を2030年までに世界全体で2倍にするという目標が掲げられました。業務・家庭部門においては、住宅・建築物の省エネルギー性能の向上を進め、断熱窓への改修や高効率給湯器の導入に対する支援などの住宅の省エネルギー改修、建築物の省エネルギー改修の支援制度の拡充に大いに期待します。また、運輸部門においては、商用トラックの電動車の導入に対し費用負担が大きく導入が進まない現状を踏まえ、国や自治体の支援制度の拡充、国が定める目標の拡大についても早急に進めていただくことを希望します。事業者のCO2削減計画と連動し、技術革新による省エネルギー施策が進み、各対策がCO2削減にも寄与していくことに期待します。

 

【P6 2.東京電力福島第一原子力発電所事故後の歩み/P33(3)原子力発電】
3. 原子力発電ゼロへの早期移行と工程の具体化を求めます。
 東京電力福島第一原子力発電所の事故から 13 年が経過してもなお、多くの方々が避難を余儀なくされています。第7次エネルギー基本計画では、「原発の発電コストが他電源と遜色ないコスト水準で変動も少ない」と明記されていますが、損害賠償、除染・中間貯蔵施設事業、廃炉・処理水対策などの安全対策費を含めるとそのコストは膨大です。いまだ使用済み核燃料の最終処分問題は未解決であるなかで、原子力発電所の再稼働や新規増設費用を国民に負担させることはあってはならないことです。
 また、地震大国日本が原発を保有する危険性は専門家からも多数指摘されています。ALPS処理水の放出についても漁業者や消費者への不安が解消されないまま実施され、課題は依然として山積したままです。そのようななか、第6次エネルギー基本計画においては「可能な限り原発依存度を低減する」とされていた表現は、第7次エネルギー基本計画では「安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく」と変更されました。2024年4月、世界最大の原子力発電所である東京電力柏崎刈羽原発において地元住民の同意がないまま燃料装填が開始され、2025年6月には6号機でも燃料充填を行う方針が発表されており、再稼働に対する不安が募るばかりです。これらの問題を踏まえて、原子力発電ゼロへの早期移行と工程の具体化を強く求めます。

 

【P10 3.第6次エネルギー基本計画以降の状況変化/P25(2)再生可能エネルギー】
4. 2050 年再生可能エネルギー100%に向け、2030 年の導入目標を国際的水準である 50%以上としてください。
 日本のエネルギー選択において踏まえるべき「安全性」「環境(脱炭素化)」「安定供給(自給率)」を同時に満たす電源は再生可能エネルギーです。近年の化石燃料の価格高騰は、エネルギーを輸入に頼ることの危うさを明らかにしました。わが国の再生可能エネルギーの割合は21.7%と諸外国と比較しても低い水準で、地熱・水力などの資源が豊富に潜在するなか十分に活用が進んでいません。エネルギー供給の内製化を推進し、自立・分散型エネルギーシステムを構築することで、非常時の電源確保、エネルギーの効率的な活用、地域経済の活性化・雇用の創出につながります。
 第7次エネルギー基本計画では、2040年度の再生可能エネルギーの電源構成比を4~5割程度と位置付けましたが、環境や社会の長期的な持続可能性を考慮すれば、2050 年には 100%を目指すべきです。「第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)」で採択された決定文書では、再生可能エネルギーを2030年までに発電容量を世界全体で3倍にするという目標が掲げられており、IPCC1.5℃特別報告書の想定水準である、2030 年時点で50%以上の再生可能エネルギー導入を目指し、蓄電池の早期開発をはじめあらゆる政策を総動員し強力に進めることを要望します。

 

【P43(4)火力発電とその脱炭素化 ③石炭火力】
5. 石炭火力は 2030 年までの段階的廃止を求めます。
 石炭火力発電における温室効果ガス排出量は非常に高く、電源構成比も30%を超える水準で気候変動問題に大きく影響します。第7次エネルギー基本計画では、「2030年に向け、省エネ法や容量市場等の制度的枠組みを活用し、事業者の自主的な取組によるフェードアウトを促進していく」としています。2024年4月の先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合では「2035年までに石炭火力発電の段階的廃止」が合意されました。
 日本は水素・アンモニア混焼やCCS(炭素回収貯留)の技術が排出削減対策に該当するとしていますが、有効性、経済性、環境影響などに懸念のある不確実な技術であり、石炭火力の温存に繋がる懸念があります。石炭をはじめとした化石燃料からのダイベストメント(投資撤退)も含め、脱石炭火力への世界の潮流の中で、限られた政策資源を終息に向かう技術分野に投入することはやめるべきです。

 

以上

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