【明日への種まき】寝に帰るだけの住む町も、災害時は 近所とのつながりが必要。ならその方法は…? 被災地復興を研究する市古さんと考えました
2024年10月に開催された八王子市K地区での防災ワークショップ。東日本大震災後の被災地での実例をもとに、在宅避難高齢者への支援活動について話し合う地域のみなさん。市古ゼミの学生が記録担当などでサポート(写真提供:市古太郎)
どうする?被災後の生活立て直しそのキーワードは“ふだんどおり”
東京都立大学教授の市古(いちこ) 太郎さんは、新潟県中越地震以降、多くの被災地に入り、被災者に寄り添いながら災害後の生活再建を研究しています。
「住民の取り組みは輪島市金蔵(かなくら)地区が参考になります」と市古さん。
「地区のみなさんは、能登半島地震発生直後に集会所に集まり、全員の安否を確認。翌日には持ち寄った食材で温かい食事を用意していました。
行政指示ではなく住民たちで復興の一歩を踏み出せたのは、ふだんからのつながりがあったからです」

能登半島地震により、金蔵地区でも多くの住居が全半壊し、道路に亀裂が生じた
学生たちが復興支援を目的に金蔵地区を訪れたときのエピソードも。
「地区のみなさんには、不自由ななかでも受け入れていただきました。また、畑仕事や花の世話もふだんどおりに。被災者は避難所で過ごすだけと考えがちですが、できることをふだんどおりに続けることが、生活再建の近道です」
「住んでいる町は寝に帰るだけ、近所に知人はいない…。そんな私たちはどうすればいい?」と聞くと、八王子市K地区の、被災時を念頭にした地域づくりを紹介。
「町内会がないこの地域。災害後、地域で中心になる人が決まっていないことに気づいた住民たちが、『誰もいないなら自分たちで』と手を挙げました。
PTA活動や青少年対策の取り組みに参加している母親たちが中心です。ここでも、ふだんの活動がベースになっています」
金蔵地区を研究室学生と訪問したときのようす(発災から2年目)。 押し入れには被災者が寝泊りするときに使用する布団も
「災害時に困らないためにも、ふだんから、地域活動をはじめてはどうでしょう。
子育て支援でも地域の清掃活動でも。そこからつながりができ、自然とリーダーなどの役割分担も生まれてくると思います」と、市古さんは結びました。
取材は2025年11月14日現在

取材した市古太郎教授
<プロフィール>
・東京都立大学・都市政策科学科 教授
・日本建築まちづくり適正支援機構(JCAABE)特別顧問
・ 一般社団法人 災害協働サポート東京(CS東京)代表理事


