【明日への種まき】熱に強く、油や水をはじく有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」の地下水汚染や健康被害が明らかに
大阪市内の隆祥館書店で講演する、『終わらないPFOA汚染』(旬報社)著者の中川七海さん(写真右)。京都大学名誉教授 小泉昭夫さん(写真中央)は、全国のPFAS汚染の調査研究に取り組み、20年以上、警鐘を鳴らし続けている(写真提供:隆祥館書店)
PFASが検出された地域では血中濃度を調べるなど、市民活動も
さまざまな用途に使われる化学物質PFAS。水や油をはじき便利な一方、分解されにくく、環境に放出されると残り続けます。
健康への影響もあることから、数千種のうち毒性の強い3つのPFAS※が製造・輸入禁止となりました。
※3つのPFAS:PFOA (ピーフォア)、PFOS (ピーフォス)、PFHxS (ピーエフヘキサエス )
しかし大阪府や岡山県など、各地の地下水や水道水から検出されています。汚染地域の住民は、汚染源特定や健康被害を訴える活動に取り組んでいます。
京都大学の小泉昭夫名誉教授と大阪の市民団体は、府民ら約1,200人の血液検査を実施。
大阪にあるPFAS製造工場の従業員の血液からは高濃度が検出され、間質性肺疾患も見つかりました(今年4月)。
PFASが環境中を循環し、人の体内に入るおもな経路
排出されたPFASは、魚や農作物、水道水を経由して、人の体内に
ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議の資料などをもとに、『わいわい』で作成 イラスト:図工ムクモト
この問題を追うジャーナリストの中川七海さんは、「工場周辺住民のPFAS曝露や、工場近くで栽培した野菜の汚染も判明しています」と現状を話します。
「市民団体は健康被害を心配していますが、工場は関連性を否定。この工場のグループ会社はかつてアメリカでもPFASを生産し、現地住民の訴えには多額の和解金を払ったのですが、
日本では責任を取りません」と続けます。
禁止になったから大丈夫と思いがちですが、今もPFASは各地で検出されています。
「東京でも、検出地域は多摩地区だけではありません。自分ごととして関心をもってください」と中川さん。
「自治体に水道水のPFAS値を問い合わせて濃度低減を求めたり、PFAS排出企業の過失責任を問う法律を求めたり、市民の行動が必要です 」と訴えました 。
取材は2025年6月13日現在


